川崎鶴見鉄道録

川崎・鶴見界隈の鉄道に関するブログ

安中貨物の終着地 安中駅の入換風景を見物する①

前の記事はこちら。 


上信電鉄の旅を終えて、次なる地へと向かいます。

高崎駅でJR線の改札口をくぐり、信越本線の横川行きに乗車します。

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高崎駅から10分ほどで、目的地に到着。

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やってきたのは安中駅です。

 

この安中駅は、通称「安中貨物」と呼ばれる亜鉛鉱石輸送列車の発着地として知られています。

安中貨物の荷主は大手非鉄金属メーカー「東邦亜鉛」で、福島県いわき市にある小名浜製錬所から群馬県安中市にある安中製錬所まで、亜鉛製錬に必要な鉱石を輸送するのが、安中貨物の運転目的であります。 

しかし上記の新聞記事にあるとおり、2022年3月までに亜鉛精錬事業を再編することが発表されており、それを支える安中貨物への影響も避けられないでしょう。

 

安中貨物自体は、常磐線高崎線での本線走行の姿は何度か撮影済みですが、両端駅での入換風景は一度も見たことが無く、集約前に一度行きたいなぁ~と思っていたのですが・・・

当ブログと相互読者登録の間柄にあるブロ友氏が、安中駅での入換風景を記事を仕立てられた影響で一気に火が付きまして、今回高崎に来たついでに安中駅へ足を延ばし、じっくりと見物しようと思い立ったのでした。

 

駅に降り立つと、さっそく側線でスイッチャーによる入換が行われていました。

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この赤茶色のタキを見ると、まさに安中貨物って感じですな。

撮影済みとはいえ、安中貨物はなんだかんだ5年ほどご無沙汰なため、川崎車両所に検査入場のため単品で見かける程度だったので、編成を組んでの状態で見るのはかなり久々でテンションが上がりました(笑)

 

安中駅での入換は、DB301という新潟トランシス製30tスイッチャーが担っています。

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機関車には東邦亜鉛株式会社と書かれていますが、実業務はJR貨物の関連会社である「ジェイアール貨物・北関東ロジスティクス」に委託されているようです。

 

私が乗車してきた電車をやり過ごすと、スイッチャーが元気よく動き出して貨車の入換を始めました。

まずは2両のタキを牽いて、横川駅方にある引き上げ線へと移動します。

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引き上げ線に入った後は方向転換し、推進運転で駅に隣接する工場へ入っていきます。

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やはり金属の製錬所というだけあり、かなり物々しい外観がそそりますねぇ。

 

スイッチャーが戻ってくるまで暇なので、駅構内に留置されている貨車を観察することに。

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現在の安中貨物は「タキ1200」と「トキ25000」という2種類の貨車によって運行されていますが、これは同じ亜鉛鉱石でも微妙に異なるものを同時輸送しているからです。

 

こちらが「亜鉛焼鉱」を輸送するためのタキ1200。

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タキ1200は2010年に誕生した形式で、貨車としては新しい部類の車両です。

比重が大きい金属鉱石を運ぶため、40t積みながら石油輸送用のタキ43000やタキ1000より一回り小さいのが特徴です。

 

こちらが「亜鉛精鉱」を輸送するためのトキ25000。

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トキ25000も1999年に誕生した形式で、こちらもさほど古くは無い部類の車両です。

現在JR貨物で運用されている貨車のうち、数少ない無蓋車でもあります。

 

 

ここで亜鉛製錬のプロセスを説明すると、まず産出した亜鉛鉱石から不純物を除いた「亜鉛精鉱」を原料として、それを炉で焼いて酸化させた「亜鉛焼鉱」という中間材料を作ります。

そうして出来た「亜鉛焼鉱」を硫酸で溶かして液状化させ、電気分解して亜鉛成分だけを分離したあと固めることで、純度の高い亜鉛の地金が完成するそうです。

 

東邦亜鉛の場合、「亜鉛精鉱」から「亜鉛焼鉱」を作り出す焙焼工程は小名浜製錬所と安中製錬所で分担して行い、電気分解工程はすべて安中製錬所で行っているので、現在の安中貨物は「亜鉛精鉱」と「亜鉛焼鉱」の両方を運ぶ必要があるため2種類の貨車を運用しています。

しかし最初の記事によると、2022年月までに「安中製錬所での焙焼工程を中止し小名浜製錬所に集約する」とあるため、集約後は「亜鉛精鉱」を安中まで運ぶ必要が無くなるので、すなわちトキ25000の用途も無くなってしまうと取ることが出来ます。

そのため、生産集約後の安中貨物はトキ25000が連結されなくなるのでは?と危惧されており、見物するならトキ25000があるうちにと思い、このタイミングでの訪問となりました。

 

 

しばらくすると、工場からスイッチャーが単機で戻ってきました。

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それとほぼ同時に常磐線泉駅からの安中貨物が到着して、ホーム横の着発線に停車しました。

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この日はトキ25000が4両だけとコンパクトな編成でした。

 

スイッチャーとEH500が並んだのでパチリ。

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スイッチャーは再びタキ2両を牽いて工場へ入って行きました。

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工場内の荷役設備の有効長の関係で、2両ずつ搬入するそうです。

 

スイッチャーが工場へ入っている間、今度はEH500の入換が始まりました。

まずは機関車を切り離して、いったん横川駅方の下り本線へと入ります。

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そのあと方向転換し、下り本線ホームを逆走して高崎駅方へ回り込みます。

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本来「本線の逆走」はあまり良いとされていませんが、安中駅は機回し線が存在しないため、本線を使って機回しせざるを得ないようですね。

それに長野新幹線開業後のこの区間は、1時間に1本程度のローカル線に成り下がってしまったので、本線で入れ換えても列車運行に支障がないという事情もあるのかもしれませんが。

 

その後着発線に転線し、先ほど牽いてきたトキ25000の反対側に回り込んで入換終了です。

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折り返し列車の荷の長さを考慮してか、停止位置がやけに遠かったです。

 

それと同時に、建屋横に留置していたトキ25000に反射板が取り付けられました。

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このトキ25000はすでに荷役を終え、返空列車に連結される車両のようですね。

 

そうしている間に、スイッチャーが工場から単機で戻ってきました。

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また2両のタキを工場へ運びます。

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また暇になったので、模型の参考用に貨車を細部まで撮影したり、お遊びカットを撮ったりします。

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工場の看板と、2種の貨車の社名表記が分かるように入れ込んでみました。

前述した通り、もしかしたらトキ25000は近い将来ここから姿を消してしまうかもしれません。

 

しばらくしてスイッチャーが戻ってきたと思ったら、今度はタキを引き連れてました。

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工場への搬入は2両単位ですが、搬出は6両単位のようです。

つまり2両搬入を3セットやって、6両一気に搬出で1ローテーとなるんでしょうかね。

 

工場から持ってきた空の6両は、側線の1つに留めおきます。

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これで終わったのかと思ったら、今度はその1線奥に留置していたタキの入換が始まりました。

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ここらで駅構内からの見物に飽きてきたので、駅横にある跨線橋に移動して違う角度から見物することに。

長くなったのでその模様は次回に続きます。