今週末にJRグループのダイヤ改正を控えておりますが、実は京急でもちょっとした変更が実施されます。
といっても、京急をはじめとした所謂「四直」の路線は先行して2月26日にダイヤ改正を実施済みなので、列車運用に関することではありません。
では何かというと、実は空港線の一部運賃が改定されるのであります。
京急には羽田空港2駅と泉岳寺以遠の都営地下鉄全線および京成線、北総線全線の各駅を普通運賃で相互利用すると一定額が割引される制度があり、競合関係にある東京モノレールとの競争力を確保する施策が行われています。
ところが、昨今のコロナ禍の影響により航空需要が落ち込こみ、それと比例してドル箱路線である空港線の利用客数も減ったことから、このたび割引額を縮小して実質10円値上げされることとなりました。
そしてこの運賃改定と同時に「とある切符」も終売となることが発表されました。
空港線内のうち糀谷駅、大鳥居駅、穴守稲荷駅、天空橋駅の各駅と都営線、京成線、北総線各駅の相互利用時に割引となる「羽田みらいきっぷ」という企画切符も発売を終了するのです。
なんでこのお得な切符も道連れで廃止されるのか?というと、前述した空港線の特殊割引が関係しています。
京急プレスリリースより
この特殊割引制度、そもそも数百円の運賃に対して60~90円も割引くため率でいうと結構な大きさなので、割引対象となる泉岳寺以遠の駅を発着する場合、割引が適用される羽田空港第3ターミナル駅より距離が短い糀谷駅~天空橋駅のほうが運賃が高くなるという逆転現象が発生しました。
そしてこの制度は「羽田空港を発着する場合に限り割引」なので、上の図でいうところの460円の切符を買った場合、羽田空港第3ターミナル駅では降りられても手前の糀谷駅~天空橋駅では降りることができないという、距離に比例して運賃が高くなるという運賃制度の大原則と矛盾が生じる仕組みなのです。
その糀谷駅~天空橋駅の利用者に対する救済措置として、該当4駅で特別に発売されることになったのが「羽田みらいきっぷ」誕生の理由であります。
そんな大いなる矛盾を孕んだ特殊割引制度ですが、今回の運賃収入減少による割引額の見直しにより、羽田空港第3ターミナル駅と糀谷駅~天空橋駅の運賃が同額となり、図らずとも上記の逆転現象も解消されることになりました。
消極的な理由ではありますが、結果的に「羽田みらいきっぷ」の存在価値も無くなったことからお役御免となったのです。
とまあ前段がやけに長くなってしまいましたが、そんな「羽田みらいきっぷ」を終売前に収集しておこうというのが、今回の主旨でございます。
というわけで京急川崎からエアポート急行に乗って、まずは糀谷駅へと向かいます。
糀谷駅では泉岳寺から都営線180円区間のきっぷを、大人と小人両方購入。
この切符で特筆すべきなのは軟券の常備式であるということで、コレクター需要を意識したかどうかは知りませんが様式もしっかりとしております。
糀谷の駅員さんに「収集目的で買いに来る人はいますか?」と伺ったところ「終売が発表されてから結構来られてます」とのことで、これが感熱紙とか金額式の小型サイズだったらここまで注目を集めることは無かったでしょうね。
続いては大鳥居駅へ。
大鳥居駅は西口と東口で改札口が分かれており、それぞれ出札を行っています。
・・・と思っていたのですが
なんと今年1月28日に東口は無人化されたそうで、出札窓口も閉鎖されておりました。
「じゃあ西口で買えばいいじゃん」と言われればそうなんですが、東口で買いたかった理由があったのです。
発行駅の欄を見ると「大鳥居(西)」とあるように、実は同じ大鳥居駅でも西口と東口どっちで発売したか識別できるようにスタンプが作り分けられているため、東口で買えば「大鳥居(東)」というスタンプが押された切符が買えたのですが、窓口閉鎖に伴い(東)表記の切符は買えなくなったのです。
コレクターたるもの、できるだけ多くの種類を収集したくなる性分でありますが、東口が無人化されたことを全く知らなかったこともあり、悔しかったですねぇ・・・。
そんな傷心の中、続いては穴守稲荷駅へ。
ここは窓口は一つしかないので、普通に京成線区間の口座を購入。
都営線は黄色の用紙でしたが京成線はオレンジの用紙となっており、どこの事業者向けの切符か一目で判別できるようになっています。
最後は天空橋駅へ。
天空橋駅は改札口が2つあり、昔からある東京モノレール乗換口と、2020年7月に新設された羽田イノベーションシティ(HICity)口で発売されています。
事前に調べても情報が無かったのですが、大鳥居駅の例から鑑みるとスタンプが作り分けられている可能性があると踏んで、両方の窓口で買ってみると・・・
予想通りHICity口発売分の切符には、新規作成したと思われる(HIC)が追加されたスタンプが押印されていました。
天空橋駅では北総線用の切符を買ったので、赤色の用紙となっています。
といった感じで4駅回って収集したのがこちら。
合計3610円をつぎ込みましたが、当然ながら1枚も使うことはありません(笑)
ここからは解説も交えて細かく見ていきましょう。
まずは糀谷駅で買った「泉岳寺から都営線180円区間」の切符。
京急線と直通しているのは都営地下鉄でも浅草線だけですが、この切符は「泉岳寺起点で都営線180円の区間」に適用されることから、三田駅で浅草線と接続する三田線および大門駅で接続する大江戸線の駅も範囲に含まれます。
180円区間だと浅草線、三田線、大江戸線の3路線ですが、その1つ上の220円区間では東日本橋・馬喰横山で接続する新宿線も含まれるため、行先が4路線併記となります。
糀谷と大鳥居で区間を買い分けたのは、実は3路線併記と4路線併記両方の様式が欲しかったからでありました。
裏面はそれぞれの切符で有効な範囲を示す路線図が印刷されています。
金額により区間が異なるため、全ての口座で作り分けされていると思われます。
続いて穴守稲荷駅で買ったのは、京成線向け「押上から190円区間」の切符。
京成線向けの口座だと「押上から140円区間」「160円区間」というのもありますが、今回はあえて最安より2つ上の190円区間を購入しました。
なんでかというと、140円区間だと京成曳舟・八広、160円区間だと四ツ木・京成立石と押上線内の2駅ずつしか記載されませんが、190円区間まで伸ばすと青砥・京成高砂から京成本線と金町線へ分岐し行先が3行に増えるのです。
全口座コンプする気は最初から無いので、それならばと駅名や路線が多く記載され見栄えが良い190円区間を狙い撃ちしたというわけであります。
こちらも裏面には路線図が描かれています。
都営線は利用可能な範囲しか路線図が表現されていませんでしたが、京成線の場合は全線を記載したうえで利用可能範囲を強調する表現になっています。
この辺の差もちょっと面白いですね。
最後は天空橋駅で買った北総線向けの「京成高砂から210円区間」の切符。
相手駅が1駅だけという様式は北総線向けしか存在せず、たまたま最安区間が新柴又1駅表示だったので、素直に最安区間を買っておきました。
裏面はこちらも路線図となっています。
路線図の形は京成線向けと同じなんですが、京成線内の表記は京急線~北総線を連絡する際に通過する区間以外は駅名をバッサリ省略しています。
これもなかなかシュールで印象に残るデザインですね。
といった感じで、もうすぐ発売終了となる「羽田みらいきっぷ」をご紹介しました。
発売は3月11日までですが、発売終了後も購入日から3か月使用可能なので、ご興味おありの方は購入してみてはいかがでしょうか。