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2023夏 北海道遠征、今回から6日目のお話に入ります。
6日目は旭川市からスタートです。
6日目の舞台となるのは、旭川市から遠く離れた十勝地方。
向かうは上士幌町の糠平湖に浮かぶ「タウシュベツ川橋梁」です。
タウシュベツ川橋梁は、1987年に廃止された旧国鉄士幌線の遺構のひとつかつ、最も有名なスポットです。
この橋梁自体は廃線よりさらに前の1955年に、糠平ダム建設によるルート変更により役目を終えており、糠平ダムによってつくられた人造湖「糠平湖」の中へと取り込まれてしまいました。
しかし糠平湖はダム湖のため水位変動が激しく、水位の低い季節のみ姿を現すことから「幻の橋」とも呼ばれています。
そんなタウシュベツ川橋梁、実はここも5年前の北海道一周の旅で行こうとしていたのですが・・・
2018年は、梅雨がないはずの北海道でも大雨が降り続いており、7月時点ですでにほぼ水没しているという運の悪さ・・・。
前々回の青い池に続き、今回は5年越しのリベンジでございます。
というわけで旭川市を出発したのですが、目的地である糠平湖までは約130km、しかもオール下道なので、朝っぱらから2時間以上の遠距離移動。
観光地で見かける景観配慮仕様のセブンイレブンなのですが、実はこのお店はスキージャンプ選手の高梨沙羅さんのご実家が経営していることで有名でした。
なのですが、ドアには閉店のお知らせのポスターが・・・。
訪問した2日後に閉店予定となっており、店内のショーケースは在庫処分のためスカスカになっておりました。
層雲峡周辺は北海道有数の山間部のため集落がほとんどなく、このセブンイレブンは大変重宝されていたなかでの閉店は影響が大きかったらしく、現在は別の会社が経営を引き継いで復活したそうな。
実際走りましたが、この界隈は本当に何もない山道が続くので、存続されて良かったですね。
そんなこんなのドライブを経て、糠平温泉街に到着です。
タウシュベツ川橋梁の見物は個人でも可能ですが、今回は「ひがし大雪自然ガイドセンター」が主催しているツアーに参加します。
タウシュベツ川橋梁へ行くには、未舗装の林道を数km走っていかなければならないので、レンタカーで行くにはそれなりのリスクがあるのと、個人で立ち入るには1名あたり2000円を支払う必要があります。
それであればガイド付きのツアーに参加するのも十分ありかと思います。
ツアー定員は1回あたり10名ほどのようで、受付を済ませて簡単なレクチャーと長靴の支給があり、車2台に分乗してメインのタウシュベツ川橋梁へと移動開始。
まずは橋梁へつながる林道の入口へ。
林道の入口には柵があり、事前許可を得た車のみが侵入することができます。
林道はこんな感じ。
砂利道なので晴天時は普通に走れますが、雨天時はぬかるんで走りにくそうな路面状態です。
林道のなかに柵がある箇所が。
ここは旧士幌線の廃線跡だそうですが、廃止から35年以上が経過しており、すでに自然に還ってしまってます。
林道を5分ほど走ったあと、湖畔へは徒歩で向かいます。
満水時には林道も水に浸かるようで、流木が転がっていました。
林道を抜けると糠平湖畔へ到着。
そしてそこには・・・
5年間待ちに待ったタウシュベツ川橋梁が目の前に!
お天気もバッチリでございます。
前述したとおりタウシュベツ川橋梁が架かる糠平湖はダム湖のため、降水量や発電計画により年ごとに水位変動があります。
しかし2023年は低水位で推移していたそうで、橋の真下まで立ち入れるほどでした。
ガイドさんいわく、7月下旬でここまで水が無いのは珍しいらしく「緑に覆われたタウシュベツ川橋梁」というのも意外とレアな光景なのだとか。
橋の下に水が入ると、風のない日は水鏡によって「メガネ橋」になることで有名ですが、橋の全景を見るならば水が引いているときのほうが良いですね。
橋梁の中には、橋の名前の由来となったタウシュベツ川が流れています。
晴天続きだったからか水位が低く、水質も綺麗でした。
川を渡って今度は南側へ回り込みます。
北側に比べて南側は劣化が進んでいます。
タウシュベツ川橋梁はダム湖の中へ沈むことに加え、冬場になると氷点下数十度になる環境のため、水没と乾燥、凍結と解凍を繰り返したことでコンクリートの劣化がとても激しいそうな。
さらに十勝地方は地震も多いため、一部のアーチは今にも崩れ落ちそうな状況となっております。
何年も前から「完全な姿が見られるのは今年が最後かも」と言われていますが、想像していた以上にアーチが細くなっており、大きな地震が一発来たらあっけなく崩壊しそうですね。
最後は丘に登って引き構図で撮影。
遠くから見ると、まるで古代遺跡のようであります。
そんなこんなで、あっという間に見物時間は終了。
この日は45分ほど見物時間がありましたが、ちょうどいい具合だったと思います。
このあとツアーは別の場所へと向かうため、車に乗り込んで林道を戻りますが、その林道にまさかの影が・・・
なんと道端にヒグマが出没したのです!
しばらく様子見をしていると、脇の林へと入って逃げていきました。
と言ってもここは完全なる森の中なので、どちらかというと我々がヒグマの生息地へ進入しているため、熊が出没するのはある意味当たり前のこと。
ゆえに不用意な侵入を防ぐため、林道入口が鍵付きゲートで封鎖されているのです。
そしてさらに驚いたのは、このあと徒歩で林道に侵入してきた観光客と遭遇したこと。
この林道は原則徒歩での立ち入りが禁止されていますが、時折ゲートの脇から進入する観光客がたまにいるそうです。
その観光客に「今さっきヒグマが出た」とガイドさんが警告すると、その人たちは血の気が引いて呆然としておりました・・・。
そのあと観光客が引き返したかどうかは知りませんが、印象的だったのは「もしも徒歩で侵入した観光客がヒグマに襲われたら、間違いなくこの林道は閉鎖され、二度と立ち入れなくなるだろう」というガイドさんの言葉。
万が一林道内でヒグマに襲われて死亡したとして、それ自体は自己責任で終わるのですが、その余波は無関係の人たちにも及んでしまうのです。
もし自分が当事者になったら、自分の身や責任だけでは済まされない事態になることを自覚し、決して徒歩で無断進入などせずタウシュベツ川橋梁を楽しみましょう。
といった感じで、タウシュベツ川橋梁の見学はこれにて終了。
このあとはツアーは、周辺にある旧士幌線の遺構を巡ります。