先週末のことですが、鉄道部品がらみで秋田市へと遊びに行っておりました。
今回の遠征は部品即売会の参加がメインで、撮り鉄などそのほかの活動をする気はなかったのですが、秋田市内で気になっていたスポットがあったので即売会前に立ち寄ってきました。
そのスポットとはこちら。
つい先日、解散が発表された秋田臨海鉄道でございます。
秋田臨海鉄道は2021年3月末で実質事業を停止しており、その後は不要となった各種跡地の原状回復工事のため存続していましたが、約2年をかけてそれらの工事も終了。
そして2023年5月22日付けで、法人として完全に消滅するに至りました。
秋田臨海鉄道には2020年夏の遠征で訪れたことがありました。
そんな縁もあり、秋田臨海鉄道の跡地が現在どんな姿になっているのか気になっていたので、鉄道部品即売会の前に立ち寄って見物してきました。
そんな秋田港駅のいまの姿をお届けいたします。
今回は東京駅前から夜行バス「ドリーム秋田・東京号」に乗って秋田へ向かいます。
この東京~秋田線は何度か乗車しておりますが、所要時間もちょうどよく利用しやすいですね。
バスは途中で秋田駅などを経由しますが、私は終点の「秋田ポートタワーセリオン前」まで乗り通します。
秋田港のシンボルとしてドドンとそびえるのが「セリオン」で、足元はフェリーターミナルも兼ねた道の駅となっています。
ですが夜行バス利用的には需要皆無なようで、20人ほどいた同乗者のうち私以外の全員は秋田駅前で下車し、ここまで乗ってきたのは私だけでした(笑)
またこの道の駅はNHK「ドキュメント72時間」で話題になったうどん・そば自動販売機が設置されていることでも有名です。
なんで朝飯はこれを・・・と思ったら、まさかの10時開店でした (^_^;)
下調べが甘かっただけですが、食べられずがっかり・・・。
とまあ前置きが長くなりましたが、ここからが本題。
実はこのセリオン、秋田臨海鉄道の拠点であった秋田港駅の目の前にあるのです。
秋田港駅は貨物専用駅ゆえ市街地のはずれにあり、秋田駅からバスで向かう必要があるのですが、およそ30分弱かかるうえに1日5~6本しかないため、公共交通機関で訪れるには少々面倒くさい立地にあります。
ですが夜行バスを利用すると目の前の道の駅で下車でき、東京駅からドアツードアで訪問可能だったのも、今回夜行バスを選択した大きな理由でありました。
というわけで今回は、秋田港駅周辺の跡地を徒歩で散策したので、2020年の秋田臨海鉄道在りし日の姿も交えてレポートしていきます。
まずは秋田港駅の入口へ。
2023年5月
駅の入口にあった「秋田臨海鉄道 秋田港駅」の看板は撤去され、線路もほとんど剥がされてしまっており、なんだか物寂しい気持ちになりました・・・。
北側にはコンテナホームがあったのですが
2023年5月
こちらももぬけの殻になっていました。
秋田臨海鉄道は解散したものの、JR貨物としての秋田港駅は一応存続しているはずなのですが、秋田臨海鉄道の事業終了と同時に秋田港駅発着の列車もすべて廃止され秋田貨物駅に集約されたため、現在当駅を発着する列車は1本もありません。
貨物駅としてはほぼ廃駅状態ですが、こちらは現在も存続。
コロナ禍前に秋田港へ立ち寄ったクルーズ船向け乗客用として運行されていた臨時列車用の駅設備は、現在もそのまま残っていました。
現在の秋田港線の存在意義はほぼこの駅のためといっても過言じゃないですが、この先インバウンド需要が回復し再びクルーズ船の寄港が増えれば、秋田港線に列車が走る日が戻ってくるのでしょうかね。
続いては駅を挟んで反対側にある、土崎駅方面へと移動。
駅横の道路から駅構内を覗いてみます。
2023年5月
かつて秋田港駅構内には、海外に輸出予定だったものの計画がとん挫し、行き場を失った元JR東日本のブルトレ客車やディーゼル機関車が放置されていました。
ですが更地化するにあたり支障するためか、2022年11月ごろより解体が始まりきれいさっぱりいなくなっちゃいました。
(実を言うとその解体された車両部品がこの日放出されると聞き、それを購入するため今回秋田へ遠征したのでした。)
そしてよく見ると、構内を照らしていた照明の櫓が1本撤去されていますね。
これも片方は秋田臨海鉄道管理のものだったのでしょうか?
さらに土崎駅寄りの踏切へ。
もっとも東側の1線が撤去され、アスファルトで埋められていました。
逆に言うと、それ以外の線路はそのまま残されています。
線路はすっかり赤錆びていますが、駅構内に関しては思った以上に残っていたという印象ですね。
前述した通りJRとしての秋田港駅は存続しているので、資産区分上で秋田臨海鉄道所有の部分のみ撤去したと考えれば、秋田港駅の資産の大半はJR(旧国鉄)のものだったということでしょうか。
そしてもっと意外だったのは、現在も信号設備がちゃんと稼働していること。
スマホでズームして撮影したので画像が荒いですが、この入換信号機は電源が入っていて、誰もいない駅構内に向かって停止信号を現示していました。
その一方で、プイっと外を向いて使用停止状態の信号機も。
衛星写真で見ると、上の生きている信号機は上述したクルーズ列車用ホームに繋がっている線路用っぽいですね。
現在の秋田港駅の実態は、本当にあの臨時ホームだけのためにこの広大な設備が維持されているようでした。
最後は駅から南へと延びる本線跡を辿ってみることに。
確認してみると、私有地に挟まれたわずかな区間には線路が残っており、駅から100mほど進んだ先でプッツリと途絶えていました。
その脇には役目を終えた踏切動作反応灯も取り残されていました。
こちらも資産区分上はJRの持ち物、ということになるのでしょうか?
レールはこんな感じで寸断されています。
よく見ると寸断された枕木を境に、臨海鉄道側は木製枕木、秋田港駅側は鉄製?となっており、保線方法に違いが見られますね。
この枕木が両社の境界線だとすると納得ですが、杭などを見つけられなかったので何とも言えないところです。
寸断ポイントより臨海鉄道側は完全に線路がはがされて枕木だけ残り、踏切も柵で閉鎖されていました。
レールは剥がしたものの枕木は残置していたのは意外でした。
この枕木を回収する会社もすでに存在しないので、このままバラストとともに再開発されるときまで朽ち続けるのでしょうか・・・。
最後にセリオン前の踏切跡をパチリ。
2020年9月
2023年5月
この場所を貨物列車が通ることは、もう2度とありません。
散策を終えてセリオンに戻る途中、臨海地区の地図看板を発見。
さすがに直接の鉄道設備では無いこの看板には手を入れてはおらず、秋田臨海鉄道の路線図もそのまま残っていました。
思いのほか「秋田臨海鉄道」と書かれた標識類が残っておらず寂しかったのですが、この看板はしばらく残りそうなので、この地に貨物線があったことを伝えてくれる生き証人となってくれそうです。
といった感じで、秋田臨海鉄道解散後の秋田港駅のいまをレポートしてみました。
廃線跡を巡るのはちょっとしたロマンみたいなのを感じることも多いですが、今回の場合は解散直後だった生々しさもあり、ちょっと哀愁が先行しましたね・・・。
私がこの地を訪れることは、たぶんもう2度と無いと思いますが、興味のある方は是非訪れてみてください。