川崎鶴見鉄道録

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日本製鉄くろがね線探訪 その1 2022九州撮り鉄遠征③

前の記事はこちら。

 

キングオブ深夜バス「はかた号」に乗って、本遠征の舞台である九州の玄関口 北九州市小倉駅へ到着しました。

いよいよここから遠征本番でございます。

 

まずは最初の目的地へと移動しますが、その前にホームの立ちうどん屋で朝ご飯。

 

名物のかしわうどんを発注。

相変わらずいいお味でございました。

 

腹を満たしあとは鹿児島本線の下り列車に乗り込みます。

813系が充当されていました。

 

813系に乗ったのは5年ぶりでしたが、とある変化が起こっていました。

ご存知の方も多いかと思いますが、ここ最近813系ではドア付近の混雑緩和のため一部シートを撤去しており、そのおかげでドア間のシートが3列12人掛けのみと、着席人数がガクッと減ってしまったようです。

今回その車両に初めて当たりこりゃねえだろ・・・と思ったのですが、後日ラッシュ時に奥へ詰めずドア付近に乗客が固まり積み残しが発生していた画像をTwitterで見かけ、まあ撤去されるのも仕方ないか、と思い直した1枚でありました。

 

今回は平日のお昼前ということもあり、ガラガラだったので無事に窓側を確保。

しばし車窓を眺めながら乗り鉄を堪能し、小倉駅から10分ほどの距離にある枝光駅を発車すると、直後に山側から線路が合流してきました。

この謎の線路こそが今回の舞台でございます。

 

この線路はJR九州のものではなく、日本最大手の鉄鋼メーカー「日本製鉄」が所有する専用線 通称「くろがね線」であります。


Googleマップより

日本製鉄九州製鉄所八幡地区は、北九州市内で「八幡」「戸畑」「小倉」の3つのエリアに分かれていますが、このうち八幡・戸畑の2エリアは官営八幡製鉄所をルーツとしており、古くより一体の運営がなされていました。

この2エリア間の物流はもともと海路を利用していたものの、製鉄所の生産量拡大に伴い輸送量を上げるため1930年に専用鉄道を建設、それから製鉄所の民営化や太平洋戦争、メーカー再編などを経た92年後の現在も運用が続けられています。

 

上の地図を見ていただけると分かりますが、実はこの2エリア間は互いに鹿児島本線と隣接していますが、この「くろがね線」は海沿いの鹿児島本線とは違い内陸部を通るルートとなっております。

さらに一般的な専用線と違い、JRの貨物列車と接続するのではなく両エリア間の物資のやり取りのみに使われており、運行時刻も工場の生産状況に左右され外部の人間にはわからないので、撮影にするにはある程度沿線で張り込む必要があります。

なので乗り鉄のついでにちょっと駅撮り・・・というほどお手軽ではないのです。

 

九州まで足を運ぶ機会に恵まれず、兼ねてより「くろがね線」を撮影したいと思えどなかなかできずにいたところ、JRだけでなく「くろがね線」にも大きな波が訪れようとしている話を耳にして、もうこれ以上引っ張れないなぁ・・・と思い敢行したのが今回の九州遠征。

そのため初日にして、いきなりヤマ場を迎えた格好となりましたが、半日に渡って「くろがね線」をじっくり探訪した記録をお届けいたします。

 

 

てなわけで列車をスペースワールド駅で下車します。

 

駅名であるスペースワールドもまた、もともと八幡製鉄所の一部だった土地を遊園地として再開発した施設でしたが、2018年1月1日に閉園し、現在はイオン系列のアウトレットモールになりました。

オープンしたのはこの遠征の1か月前の2022年4月28日で、オープン直後の訪問でしたが、平日ということもありゴーストタウンのようなガラガラっぷり・・・。

休日だとそれなりに混雑しているんでしょうかね。

 

電車利用だと枝光駅のほうが「くろがね線」に近いのですが、今回スペースワールド駅を起点にしたのはこちらを利用するため。

上でご紹介したアウトレットの一角にレンタルサイクルがあるのです。

↓今回利用したHELLO CYCLING

手持ちのスマホにアプリを入れて利用登録すれば、30分単位で24時間いつでもレンタルすることが出来ます。

全国どこでもというほど展開地域は広くないですが、電車&徒歩鉄メインの方は登録しておいて損は無いサービスかと思います。

 

今回レンタルサイクルを使用するのは「くろがね線」の沿線環境に理由があります。

一応枝光駅九州工大前駅から徒歩のほか、バスを利用して内陸へ向かうことも出来ますが、路線長が6kmほどと専用線にしては規模がデカいので、機材を持ち歩いて何か所も回りながら撮影となると結構大変。

さらに沿線はほぼ全て狭い路地が入り組む住宅地となっており、車利用だと今度は駐車スペースに難儀させられることになるでしょう。

そこが自転車だと、6km程度なら軽々移動できる十分な機動力と、路地でも気軽に止められる身軽さが丁度良く、遠征組には有効な手段かと思います。

 

そんなわけでスペースワールド駅を出発。

海側には鹿児島本線とくろがね線が並走して敷設されています。

山側から来た「くろがね線」は、スペースワールド駅の門司方で鹿児島本線の下に潜り込み、製鉄所へと入っていきます。

 

そこから門司方へ進むと大きなトラス橋が見えます。

ここから鹿児島本線と別れて内陸部へと切り込んできます。

 

そのトラス橋の先にある小高い丘が最初の撮影地です。

緑色のトラス橋の右側にもう1本橋が架かっていますが、これは現在単線である「くろがね線」が複線だったころの名残。

そのため全線にわたり、複線路盤の片側に単線が1本だけ敷設されているのが、この専用線の特徴でもあります。

 

背後は山になっており「くろがね線」は線内唯一のトンネルである宮田山トンネルで戸畑側へと一気に突き抜けます。

トンネルのポータルが結構凝ったデザインで好いですね。

 

そんな場所で撮影と行きますが、前述した通り列車運行は製鉄所の生産スケジュールに左右されるため、運転されるかもわからない列車が来るのをひたすら待つ・・・というか、祈り続けるしか無いのです。

ただ以下の規則性があるので、ある程度は読むことができます。

・車庫が八幡側にあるので、八幡⇒戸畑⇒八幡の1往復で1セットとなる。

・戸畑側は着発線が公道から見えるので、そこに本線用機関車がいれば次は戸畑⇒八幡で、いなければ次は八幡⇒戸畑での運転が濃厚。

・撮影に適した時間帯では、朝、昼ごろ、夕方~日没あたりに1セットずつ設定されることが多い。

つまり八幡⇒戸畑の列車が連続したり、1セット運転された直後に次のセットが開始される可能性は薄いということです。

 

今回は11時ごろに現着したので、上記の規則性から見ると次は昼便往路である八幡⇒戸畑で走る確率が高いはず。

そう踏んでここで待機すること20分、遠くからヘッドライトが!!

読みが的中し、念願だった「くろがね線」を初撮影することが出来ました!!

さらに普段は後方補機であることが多いディーゼル機関車70DD-3形のD705が先頭の組成で、これもまたラッキーでしたね。

 

荷物的には戸畑⇒八幡の片輸送であるため、往路の八幡⇒戸畑は復路のための送り込み扱いなので、貨車は基本的に空の状態となります。

今回はロール状の鉄板を積載するためV字型の金具が付いた車両と、棒状製品を乗せるための板チキみたいな車両が混結されていました。

 

そして「くろがね線」最大の特徴は、機関車が先頭だけではなく後方にも付くプッシュプルでの運転となること。

この日の後方補機には一番撮りたかった車両が付いていました。

こちらはDC650V仕様の電気機関車である85ED-1形。

電気機関車はE8501とE8502の2両いますが、E8502はヘッドライトがLED式に換装されているのに対し、E8501は原形のシールドビームのままとなっており、E8501のほうを撮りたかったのでラッキーでした。

 

そして今回訪問を急いだ理由は、電気機関車85ED-1形の置き換え目的と思われる新型ディーゼル機関車が搬入されたというニュースを見たから。

その後試運転が行われるなど、本運用開始を目指して着々と準備が進められており、85ED-1形が見られるのも残りわずかの可能性が高く、置き換え前に姿を記録しておきたかったのでした。

 

列車は宮田山トンネルへ入り、戸畑を目指して過ぎ去っていきました。

といった感じで「くろがね線」の初撮影を無事に終えることが出来ました。

数時間粘ることも覚悟していましたが、思った以上に早く出会うことが出来てラッキーでありました。

 

このあとは列車を追いかけて戸畑へと向かいます。