川崎鶴見鉄道録

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日本唯一の「キマロキ編成」 北海道放浪の旅 9日目③

前の記事はこちら。

名寄駅 北海道放浪の旅 9日目②

 

前回は名寄駅に立ち寄りましたが、名寄市には前々から見たかったものがあったため、次の町へ移動する前に寄り道することにしました。

やってきたのは、名寄駅から少し南側にある名寄公園内の名寄市北国博物館」という施設です。 

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博物館の入口に、お目当てのものが展示されていました。

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今回見たかったのは、ここで静態保存されている蒸気機関車です。

「でも蒸気機関車なんて、型式は違えど全国の公園にたくさん保存されているでしょ」なんて言う方もいると思いますが、ここのは一味違うというか日本唯一のある特徴を持った保存機なのでございます。

 

その特徴は、横から見るとわかります。

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SLの後ろに黄色い帯を纏った事業車両がくっついており、編成を組んでいるのです。

 

「なぜ編成を組んで保存されているのか?」というのは、説明書きの看板で詳しく解説されていました。

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この保存機は列車牽引のためではなく、除雪用の列車として活躍した車両たちで、組成された車両の頭文字をとってキマロキ編成と呼ばれています。

ちなみに「キマロキ」の意味ですが

キ:先頭牽引用機関車
マ:マックレー車(線路周辺の雪をかき集める車両)
ロ:ロータリー車(雪を遠方に投げ飛ばす車両)
キ:後方押上げ用機関車

の4種類の車両で組成されていることにちなみます。

このキマロキ編成による除雪は、蒸気機関車全盛時は北海道や東北などの豪雪地帯で見られたものですが、編成のまま保存されているのは日本でここだけです。

 

ここに保存されているのは、現役時代に名寄本線で活躍した車両たちです。

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そしてこの保存機が置かれている線路は、実は廃線になった名寄本線の線路を撤去せずに残したもので、キマロキ編成と一緒に名寄本線の保存も兼ねているというわけです。

 

このキマロキ編成は、名寄公園内に置かれているので自由に見学可能なのですが、一部車両を除き車内も開放されております。

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無料の公園で車内まで開放しているのは、案外珍しいんじゃないでしょうかね。

 

というわけで、そんなキマロキ編成を1両ずつじっくりご紹介。

まずは先頭の機関車から。

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9600型 59061号機

9600型は北海道や九州の石炭輸送列車の牽引で活躍した機関車で、ここ以外でも多数の保存機があります。

ヘッドマークが掲げてありますが、このキマロキ編成準鉄道記念物に指定されており、それを記念したものとなっております。

 

59061号機は運転台も開放されていたので、こちらも見学。

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屋根なし屋外の公園内に置かれているのですが、整備が行き届いており良好な状態でちょっと驚きました。

 

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マックレー車 キ911号機

こちらは「マックレー車」といい、線路周辺の雪をかき寄せるための車両です。

車両後方にあるウイングを広げて雪をかき寄せて、後方に連結しているロータリー車へ雪を送り込みます。

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現代のロータリー車や除雪用機械では、ロータリー車側にウイングが付いており自力でかき寄せられるため、マックレー車は不要となっています。

 

マックレー車にも梯子がかかっているのですが、ドアが施錠されており残念ながら内部は見られませんでした。

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ロータリー車 キ604号機

こちらはマックレー車がかき寄せた雪を遠くへ飛ばす「ロータリー車」です。

現代のロータリー車ディーゼルエンジン駆動ですが、この時代のロータリー車は機関車と同じく蒸気機関駆動となっており、後方に炭水車を連結しています。

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まるで箱型の機関車みたいな外観ですね。

 

ロータリー車は内部も公開されています。

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こちらは前方にある投雪を制御する運転台の様子です。

この真ん中の装置で、投雪の向きや角度を制御していたみたいですね。

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運転台の後方には、ロータリー羽根を駆動する蒸気ボイラーが鎮座しています。

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機関車と違いボイラーが室内にあるので、稼働時はかなり暑かったんじゃないでしょうかね。

 

蒸気ボイラーを挟んで後方には、ボイラーの操作室があります。

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このロータリー車は自走する能力は無いため、運転台としての機能は持っておらず、純粋にボイラーを炊くための機能しかありません。

なのでメーターや配管類は、機関車の運転台と比べるとシンプルな構成となっています。

 

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D51 398号機

ロータリー車は自走機能を持たないため、ロータリー車の後ろには押し上げるための機関車が連結されています。

このD51 398号機は、ヘッドライトに副灯が付いたタイプですね。

 

運転台の様子。

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先頭の9600型とは機器や配管の配置が異なるのが分かります。

 

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ヨ3500形 4456号車

北国博物館のキマロキ編成の最後尾には、車掌車が連結されています。

実際の除雪作業時は、ポイントや信号機に付着した雪など機械では対応できない作業もあるため、除雪人員を乗せた車掌車や事業車を連結することも多かったそうです。

 

またキマロキ編成の傍らには、深名線の天塩弥生駅駅名標が保存されています。

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レプリカらしいですが、設置されて相応の年月がたっているためか、本物と変わらない味が出ておりますね。

 

といった感じで、日本唯一の「キマロキ編成」をご紹介しました。

このキマロキ編成は宗谷本線の列車からも見ることが出来ますし、名寄駅から徒歩で訪問可能です。

名寄市乗り鉄に来た折には、訪問してみてはいかがでしょうか。

 

次の記事はこちら。

美深駅 北海道放浪の旅 9日目④