前の記事はこちら。
名松線は合理化により、松阪駅と家城駅以外はすべて棒線化されているのですが、そんな単純な線形を考慮してか、松阪~家城間は「票券閉塞式」、家城~伊勢奥津間は「スタフ閉塞式」という、ちょっと珍しい閉塞管理を行っています。
実は家城駅まで乗ってきた列車の運転席には、こんなものがぶら下がっていました。
輪っかの下のケースに「通票(スタフ)」という通行許可証のようなものが入っており、このスタフを持つ列車のみが、松阪~家城間を走行することが可能となります。
基本的にスタフは1閉塞につき1つしか存在せず、スタフなしの状態で当該区間に乱入しない限り1閉塞1列車の原則が成立し、列車同士の衝突が防げるというのが「スタフ閉塞式」の考え方で、家城~伊勢奥津間がこの方式を採用しています。
ただ「スタフ閉塞式」には大きな欠点があり、スタフが1つしか存在しない故に、同一方向に連続して列車が出発できない(上下列車を交互に運行しないといけない)という制約が生じます。
これが家城~伊勢奥津のような行き止まり部分であれば、そもそも物理的に1列車しか入れないので必然的に上下交互運転となりますが、松阪~家城のような中間部分ではダイヤの自由度を大きく下げる要因となります。
そのため「票券」という、スタフの補助券のようなものを発行して同一方向連続運転を可能にし、ダイヤの自由度を上げる改良をしたのが「票券閉塞式」です。
JRで「スタフ閉塞式」を用いているのは名松線のほか、JR西日本の越美北線 越前大野~九頭竜湖間、さらには今年5月で廃止のJR北海道の札沼線 石狩月形~新十津川間でも使われてましたが、「票券閉塞式」は名松線しかありません。
というわけでこの家城駅は、そんなレアな閉塞方式を同時に2つも見ることが出来るという、ちょっとお得な駅なのです。
まず松阪駅からの列車の運転士から、家城駅の駅員にスタフが渡されます。
駅員の左手にあるのが、松阪~家城間のスタフです。
しばらくすると、伊勢奥津から松阪行きの列車が到着。
今度は駅員から松阪行きの運転手に、さきほど伊勢奥津行きの運転士から受け取ったスタフが渡されます。
写真は撮り損ねましたが、この前に家城~伊勢奥津間のスタフが運転士から駅員に渡されていました。
スタフを受け取った松阪行きは、先に出発していきました。
その後、駅員から伊勢奥津行きの運転士に、さきほど松阪行きの運転士から回収した家城~伊勢奥津のスタフが渡されます。
これでスタフの交換作業が完了です。
ちなみに2つのスタフとキャリアは、こんな感じになっていました。
「票券閉塞式」は、票券を発行して同一方向に連続出発しない限りは「スタフ閉塞式」と同じ扱いを行うため、基本的には同じものを使っていますが、キャリアの輪っか部分の配色や、ケース内のスタフの穴の形状など、両者が混同しないように微妙に異なっているのがわかります。
停車時間が結構あったので、ついでに駅舎も撮影。
家城駅は上記のスタフの扱いのため駅員が配置されており、松阪駅を除く名松線内で唯一の有人駅となっていて、JR全線きっぷうりば(みどりの窓口のJR東海版)もありますが、列車発着時は運転扱いに専念するため窓口は閉鎖されます。
札沼線 石狩月形駅も同様の扱いをしていましたが、入場券収集などで窓口を利用する際はご注意くださいませ。
無事にスタフ授受を終えて、家城駅を発車。
ここから本格的な山岳区間に入ります。
このあたりから、雲出川にぴったりと並走するように進んでいきます。
家城駅までは晴れ間も広がっていたのですが、夕立なのか時折雨がぱらついてきて、近くの山にも雲が立ち込めていました。
この後の行程もあるので、夕立で済めばよいのですが・・・。
いよいよ本格的に山岳区間へ突入。
想像以上に急峻な渓谷で、ちょっと驚きました。
線路際には、真新しい防護フェンスが張り巡らされています。
2016年の復旧に際し、JR東海が自治体に対し線路周辺の山林の維持管理を条件として突き付けたそうですが、その一環として取り付けられたのでしょうか。
たしかに、いくら線路そのものを堅牢に敷設したところで、敷地外の斜面が崩壊し土砂流入すればなんの意味も無いので、JRの言い分も正しいのでしょう。
キハ11形はそれなりに前面展望も出来そうだったので、しばし見物。
JR型の気動車だけあり苦も無く上ってきますが、それなりの急曲線と勾配が続く線形であることがわかります。
そんな感じで山を登り続け、終点の伊勢奥津駅に到着。
これで名松線の完乗を達成です。
15本目 名松線 415C 松阪⇒伊勢奥津
乗車時間:1時間24分
移動距離:43.5km
次の記事はこちら。