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昼飯を終えて、ここから今回の旅の本番となります。
最初の目的地は駅から少し離れているので、小樽駅前からバスに乗り込みます。
10分ほどかけてやってきたのはこちら。
ここは小樽市総合博物館という施設でございます。
実はこの博物館は「北海道 鉄道の発祥の地」である旧手宮線 手宮駅の跡地を活用した北海道最大級の交通博物館なのです。
名前を聞くとアカデミックでお堅そうなスポットに思えますが、私が北海道に住んでいたころは「小樽交通記念館」という名称で運営されていて、そう聞くと当ブログの読者層的には一気に親近感がわいてくると思います(笑)
手宮線はすでに廃線となっていますが、北海道の鉄路発祥の地を示す0キロポストなども残されています。
門司港にある「九州鉄道記念館」の北海道版とイメージしてもらえば、分かりやすいかと思います。
私が最後に訪れたのは、おそらく中学生くらい?だったはずなので、約20年ぶりの訪問となるのですが、訪れたきっかけはこのニュースを知ったからでした。
この博物館には貴重な車両も保存されていますが、そのなかの「ED75 501」と「ED76 509」を解体処分すると発表されたのです。
解体の理由は、搭載する変圧器などに猛毒のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含有されているため除去する必要があるものの、長年の屋外展示がたたってか車体も腐食が進んでおり、やむなく車両ごと解体に踏み切ったとのこと。
PCBは0系や711系など、1960年代までに製造された初期の交流電車で絶縁材として使われていたものの、毒性が明らかになってから非PCB化改造が行われており、当該車両もてっきり改造されていたと思っていましたが、まさか令和の時代に再燃するとはビックリしましたね・・・。
報道では「7月中旬より除去作業に着手」とあり、なんとかギリギリ間に合うか?というタイミングだったので、最短でたどり着くため千歳から直行してきたのです。
ですがそれ以外の展示も、大人の視線で改めて見直したかったので、今回はじっくりと探訪したいと思います。
まずは屋内展示が行われている中央展示館から参りましょう。
中央展示館は施設全体の入場ゲートも兼ねており、ここで入場券を購入します。
小樽市が運営する博物館とあって、入場料はお安めの設定になっております。
ちなみに小樽市総合博物館は、観光地としても有名な小樽運河の近くにも施設があり、そこにも入れる入場券もあるようです。
私は運河館へは行かないので、400円を支払って入場券を購入。
硬券入場券チックな様式が鉄オタにはツボですね(笑)。
入場ゲートも改札口風味な造りとなっていました。
入場して出迎えてくれるのは、レトロなアメリカンスタイルが特徴の蒸気機関車。
この機関車は、北海道初の鉄道である「官営幌内鉄道」で使用するため、アメリカから輸入された車両で「しづか」という愛称が付けられています。
官営幌内鉄道が輸入した同型機関車は全8両ありましたが、そのうち「しづか」を含む3両が現存しており、残り2両は京都鉄道博物館に1号機の「義経」が、大宮の鉄道博物館に2号機の「弁慶」がそれぞれ所蔵されています。
そして全3両とも、鉄道文化遺産に関する指定制度で最上位の鉄道記念物に指定されており、日本の鉄道創成期から受け継がれる貴重な車両であります。
この「しづか」は当博物館のシンボルとなっており、他の車両が屋外展示のなか専用ホールで大切に保存されています。
状態はかなり良く、実際に触れられるのも好いですね。
そして「しづか」と並ぶように客車も展示されています。
この客車もまた貴重な車両のようです。
こちらは開業当時アメリカから輸入された車両を手本に、北海道で初めて製造された客車「い1」という車両で、これも鉄道記念物に指定されています。
一等車扱いの車両のため、側面には一等車を示す表記が付いています。
アメリカ風なデザインが、開拓当時の北海道を象徴するようで好いですね。
車内も開放されていたので見物。
復元されたとはいえ、これと同等なものが130年前に造られたと思うと、一等車にふさわしい豪華さじゃないでしょうか。
屋内で展示されているのはこの2両のみで、そのほかのスペースでは北海道の鉄道史に関する資料などが所蔵・展示されています。
まずは北海道の鉄道年表。
北海道に初めて鉄道が開通したのは1880年のことで、内陸部の石狩炭田で産出された石炭を小樽港へ輸送することを使命としていました。
新橋駅~桜木町駅間に日本初の鉄道が開通したのが1872年、京阪神を結ぶ鉄道が1876年開通なことから鑑みると、明治政府の北海道開拓への本気度が伺えますね。
開業前の試運転を再現したという模型。
京浜間や京阪神間の鉄道がイギリス式で建設されたのに対し、北海道の鉄道はアメリカ式で建設されたのが特徴です。
その建設において重要な役割を果たした技術者クロフォードは、幌内鉄道の終端となった三笠市にある鉄道公園「クロフォード公園」に、現在もその名を残しています。
そして延伸とともに国有化され、国鉄として北海道のあらゆる地域へ鉄路が伸びていきます。
国鉄時代の切符や愛称札などもありました。
そして北海道の鉄道史で欠かせない「殖民軌道」の展示も。
当ブログでも別海町にあった「旧別海村営軌道」の跡地を取り上げたことがありますが、こういった資料が網羅されているのも北海道の鉄道博物館ならではじゃないでしょうか。
そのほか貴重な車両部品なども。
とまあ、北海道の鉄道史にまつわる展示がいっぱいありました。
九州鉄道記念館もそうですが、地方の鉄道史を学ぶなら大宮や京都鉄博よりもこういった地方の鉄道博物館のほうが展示物が充実しているので、見る価値は存分にあるかと思います。
今回紹介した内容はほんの一部にしか過ぎないので、気になる方は実際に訪れてみてください。
次回は屋外展示の車両を見学します。